酒場にて AdriatiqueBlue

ふぉろわーとの創作で書いたお話。 海軍と海賊の能力モノです。

カァン!

ジョッキをぶつけあう音が店内のガヤに紛れて響いた。周りの客もバカみたいに騒いでいるから窓側の隅っこにあるテーブルには目もくれないが、ここらで名の通る一人の男と、その向かいに座る特徴的な海軍の服を来た男を見れば驚く者もいるだろう。

地中海~アドリア海辺りに浮かぶ小さな島【アックア・プロフォンダ】

観光地・貿易の地として栄えているその港からほど近い大通りにあるこの酒場では、この辺りで働く人間、はたまた全く働いていないダメ人間、そして海賊と呼ばれる犯罪者にそれらを取り締まる海軍まで様々な人間が入り浸っていた。

名の通る男…リカルドは、とある海賊の船長だ。
100を超えるような船員をまとめる若き船長は、そのカリスマ性と溢れるほどのコミュニケーション力はこの辺りじゃ有名で、リカルドと聞けば二言目にはああ、あの海賊の?と続く人が多くいるだろう。
悪い噂ももちろんあるが、リカルドの筋が通った正義と、そのさっぱりとした性格からか街にはリカルドを慕う人間も多い。

と、一方の海軍の男はそこまでの地位には見えず、せいぜい街の警備をする【お巡りさん】程度だろうことが伺える。

一見すると敵である海賊と海軍が一緒に酒を酌み交わしているなんて、と驚くだろうが、
先述のリカルドの性格を知った仲であれば
「あぁまた敵と酒盛りしているのか。変な男だなぁ」
などと思ってあっさり流すのだろう。

リカルドは初対面の人間と仲良くなるのがうまい。
この海軍の男とも出会って数分で仲良くなり、何杯目かわからなくなるほどにはジョッキを空け、しこたま酔っている。
その巧みな話術と持ち前の明るさによるものだ。

「リカルドさん!僕は今後、出世していけるでしょーかっ!海軍のっ!トップに!!なれるでしょうかぁ!」
「もちろんなれるともジョン!お前の行動力は目を見張るものがある!今日も通りのばあさんの猫を探しあててただろう。お前の探知能力はこの島イチ、いや世界イチだ!!自信を持てジョン!さぁ今日は俺の奢りだジョン!なんでも食え!飲め!明日からの仕事でジョンはまたトップになる一歩を踏み出すんだ!!」
「り、り、リカルドさぁあん!!僕、リカルドさんに一生付いていきます!」

海軍の男…ジョンは最早泥酔といってもいい。
号泣しながらも更に酒を呷り、追加で頼んだつまみを貪りながら感謝の言葉を吐く。そしてまた嗚咽と酒を一緒に飲み込む。

下っ端だろうが仮にも海軍が海賊の、まさかの船長についていくのはダメでしょう…何杯目かの酒とつまみを持ってきた店員は思ったが、リカルドは確かにいい男だった。
甘くて優しい言葉で自信を持たせて、勇気をくれる。その場限りの酒の相手が話す夢すらも手伝ってくれるような理想の男。海賊という悪行さえかっこよく見えてしまうほどのいい男。この酒場にくる常連達ならジョンにツッコむどころか
「そうだろうそうだろう!リカルドに付いていこう!海軍なんか辞めちまえ!」
と平気で言っていそうだ。
もっとも酒場の常連といえば、朝まで騒いで吞んだくれ、吐きながら胃薬片手に仕事に赴くようなどうしようもない連中も多いのだが。

そんなジョンを見ながらリカルドはにっこり笑って酒を呷った。

初めて会った時ばあさんの猫を自らが持つ探知能力を使って探し出してやっていた。
そんな良い奴だと分かっていたから、今日は美味い酒が飲めた。海軍とはいえこういう奴とはイイ酒が飲める。ジョンに感謝だ。
だがジョンもそろそろ限界のようだし、今日はこれでお開きか。

そう思いながらつまみに手を伸ばしたところで、店の入り口をぶち壊す勢いで扉が開かれた。

金属で作られた扉は開いてからもワンワンと余韻を鳴らしている。
あまりの衝撃音に店内が静まり返り、誰もが扉の先へと視線を集中させる。
客の騒音で聞こえていなかったBGMが、まるで”彼女”の登場曲かのように静かに響く。

「海軍ともあろう男が。何をしてんだ?」

最初に目に入るのは鮮やかな赤。

赤珊瑚を思わせる彩度の高い髪を一つにまとめていて、アドリアティックブルーのベレー帽がその色を更に印象づけていた。
海軍の服にしてはド派手ともいえるシースルーの軍服で、スタイルの良い引き締まったラインが透けて見える。
一旦下げた視界を上に戻すと、ガーネットのような深い赤の目が、しっかりとこちらを睨んでいる。

流石にこの展開は予想していなかったリカルドだったが、やがてニヤリと口角を上げて彼女に声をかけた。

「どうやら酒が飲みなおせそうだな。こっちへ来いよ、海兵さん?」

—————————————- ロザリアちゃんキャラシきた記念

ほぼリカルドさんの紹介だったけども! 青と赤のね、コントラストがね、、イイよね(ここで光悦の絵文字)